「で、付き合う?」
羽生が言った。

「え…?」
当然そういう流れになると思っていた葉月には、羽生の質問の意図がわからない。
「どういう意味?」
「言ったと思うけど、俺、次に付き合う子とは結婚したいと思ってるんだよね。」
「え、あれって女子の興味を削ぐための嘘じゃないの!?」
葉月は驚いて言った。
「なにそれ。そんな嘘つかないって。」
「………」
(絶対冗談だと思った…)

「だから、付き合うんなら結婚前提になっちゃうけど?」
(正直、ピンと来なすぎて全然結婚してもいいって思っちゃってる自分がいるけど…)
葉月は自分の気持ちが浮ついてしまっていることを自覚していた。
「えっと…理由…」
「ん?」
「理由が知りたい。結婚したい理由…」

「理由…」

「………」

「理由ねぇ…」

羽生が珍しく逡巡するように、腕組みをして眉間にシワを寄せて口籠ってしまった。

「え、言えない理由なの?なにか悪いこと?」
「全然そんなんじゃない。」
「教えてくれなきゃ決められない…」

「笑わない?」

「わかんない…」

「くだらないって言わない?」

「聞いてないからわかんないよ…」
葉月は困ったように眉を下げた。

「だよなー」