葉月と羽生は建物を出ると、散歩するように周辺を歩いた。

「え!じゃあ鈴Pに言っちゃったの?」

羽生は夕飯の調理の時間に押し入れに隠された酒を持ち出し、葉月が浴場に行こうと迷子になっていた時間に鈴木先生の部屋に酒を持って行ったらしい。

「酒持ち込んでるヤツがいるけど、飲んでないから多目に見てね…って言いに行っただけだけど。」
「それで多目に見てくれるもんなの?」
「だから、酒と一緒につまみも渡して、良かったら先生方で呑んでくださいって言っといた。」
「信じらんない…先生を買収したってこと!?」
「買収されるほうが悪いだろ。つーか、鈴木だってわざわざこんな行事で揉め事起こしたくないんだよ。」
「カレーと一緒にコソコソなんか作ってると思ったら…」
驚きと感心と呆れが一緒にやってきた。

(先生にお酒持っていくって(イチ)(バチ)かじゃん…何考えてんの…)

「だいたい、なんで羽生くんがそんなこと…スルーしそうなのに…」

「普段だったらほっとくけど、荻田の誕生日じゃん。揉め事起きるのも、それに利用されるのも嫌でしょ?」

「え…もしかしてバスのとき……聞いてたの…?」

羽生はまた、含みのある顔で笑った。

葉月の鼓動がトクントクンと早くなる。