振り向くと、羽生がいた。

「羽生くん。お風呂どこだっけ…」
「迷子かよ。あっちの階段降りてくとあるよ。」
「ありがとー。羽生くんはこんなところで何してるの?」

生徒の宿泊フロアではないため、他には誰もいない。

「ちょっとね。」
「…?」
「風呂って結構時間短くない?大丈夫?」
「えっあ!そうだった!いかなきゃ。じゃあね!」

(このフロアって、たしか先生たちの部屋のフロア…?“ちょっと”ってなんだろう…?)


「なんか男子の部屋にみんな集まってるらしいよ。葉月たちも行こうよ。」
風呂上がり、クラスの女子が葉月たちに声をかけた。

(あ…)

——— 夜罰ゲームでテキーラショットな。女子も呼んでさ〜

(んー…さすがにそこまでヤバいことは起きないかな…いやでも、テキーラって…これ、先に先生にチクッてもいいやつ…?でもお酒の持ち込みってどれくらいの罰になるんだろう…運動部の子とか部活停止だったり…?うーん…私が呑まされたら嫌だし…)

「あ、私は—」
関わらないのが安全だと思った葉月は「遠慮しとく」と言うつもりだったが

「羽生くんもいるらしいよ。」

「行く…。」

(羽生くんて、そういうの参加しなそうなイメージだったけど…?)