「ねえねえ葉月ー!羽生くん大丈夫?ガチで告ろうとしてる子もいるっぽいけど?」
茅乃がこそっと、葉月にだけ聞こえるように言った。
「え…」
「葉月って羽生くんのこと、マジな感じで好きでしょ?」
「え!!」
「バレバレだよー。本人も気づいてるかもね〜。」
「えー…」
「羽生くんも葉月のことはちょっとトクベツって感じじゃん?今日誕生日なんだからさーいっちゃえば?」
「いっちゃうって…だいたいたまたま隣の席ってだけで…」

本当は葉月も、羽生が他の女子より自分と親しいとは思っている。
(真面目男子時代から話してたし、この前は一緒に出かけたし…たまにLIMEもしてるし…)
だからこそ、誰とも付き合う気がないと言っていたことに臆病になってしまう。
今の関係を崩したくはない。

バスでの移動中、同じ班の葉月と羽生の座席は近かったが、隣同士ではなかった。
羽生はずっと寝ているようだった。

「なー、持ってきた?」
後ろの方の席で男子が何やらコソコソ話している。
「ビールとテキーラ持ってきた。夜罰ゲームでテキーラショットな。女子も呼んでさ〜」
こっそり持ち込んだ酒の話だ。
「つーかマジでばれないように隠し場所決めようぜ。」
「なんか今日荻田の誕生日らしいからさ、バレても荻田の誕生祝いで調子乗ったって言えば鈴Pなら許してくれそうじゃね?」

(…聞こえてるんですけど…ひとの誕生日、変なことに利用しないでほしいなぁ…)
男子の企みに巻き込まれそうな葉月は、少し憂鬱な気持ちになっていた。