「え、てゆーか、洋食屋さん…?リトルガーデン…?」
「あれ?知ってんの?」
「えっと…食べに来たことはなくて、今日行きたいって思ってて、それでケンカになっちゃって…」
羽生は小さく苦笑いをした。
「うちの店が原因かよ。」

———ぐ〜…

葉月のお腹が鳴った。
「あ…最悪…」
葉月の顔が赤くなるのを見て、羽生は笑った。

晃一(こういち)、その人誰〜?」

部屋の入り口の方から、幼さの残る声がした。
見ると小学生くらいの男の子が立っている。
(…君こそ誰…)
「あ、侑輔(ゆうすけ)。ちょうどいいところに来たな。」
「ねぇ、誰?」
侑輔と呼ばれた男の子がまた質問する。
「荻田、なんか食べたいものある?うちの店で食べたいもの決まってた?」
「え…?えっと…パスタ食べようと思ってたの。」
「種類はなんでもいい?」
「え、う、うん、え?でも…」
「侑輔さ、今一番得意なパスタ何?」

「プッタネスカ!」

侑輔が自信満々に答えた。

(…なにそれ…)

「荻田ってアンチョビ…えっと、イワシとトマトとオリーブ大丈夫?」
「う、うん…」

「じゃあ侑輔さ、このお姉さんにプッタネスカ作ってあげて。俺と侑輔の分と3人分作ろうか。」

(え!こんな子どもに…?)

「え!いいの!?やった〜!」

侑輔は嬉しそうに答えると、冷蔵庫を開けて材料を取り出した。