「旅行の行き先どうしようか?」

葉月と翔馬は今日もデートでカフェに来ていた。

「近場だよね。伊豆とかは?いろいろ遊べるみたいだよ。」
葉月が言った。
「伊豆か〜いいねー。」
葉月は翔馬が同意の言葉を口にするのを、味のしないアイスティーを飲みながら無言で聞いていた。
「でもさー近場って言ったらやっぱ箱根で温泉じゃない?」

翔馬の言葉を聞いて、葉月は「やっぱり」と思った。

「いいね、箱根。湖とかあるんだよね。」
葉月はにっこり笑って答えた。

(翔馬くんの中ではもう箱根に行くって決まってる。)

ここで葉月が他の候補を挙げれば、おそらく翔馬は不機嫌な表情を見せるだろう。

旅行先でもきっと同じように、葉月に提案を求めても、翔馬の希望が決まっている…というやりとりが繰り返されるだろうと想像がつく。

———ふぅ…

葉月は翔馬に気づかれないような小さな溜息を()いた。

(全部リードして決めてくれてるって思えばいい…のかなぁ…)


——— 本当は自分でもわかってるんじゃないの?どうするべきか

(…うるさいなぁ…)