日直の仕事は簡単なもので、朝一番に教室に来たら空気を入れ替えること、その日の出来事を日誌に記入すること、そして各授業ごとに黒板に書かれた板書を消すことだ。
「上の方は俺が消しとくから、荻田はテキトーに下の方だけ消しといて。」
こうして並ぶと羽生は背が高い。葉月も背が低い方ではないので黒板の一番上まで消せるが、羽生は気づかってくれたようだった。
(…何気に腕がたくましい…)
黒板消しを左右に動かす羽生の腕は、本ばかり読んでいて、スポーツもしなそうな羽生のイメージからは想像できない筋肉質なものだった。
(…趣味、筋トレとか?)
知れば知るほど、よくわからなくなっていく。
放課後
「今日は早く帰らないんだ…」
もう他の生徒は全員いなくなった教室で、日誌に向かいながら葉月が言った。
「だからどんだけ薄情なやつだと思われてんだよ、俺。」
「だっていつも一番に帰るから。大事な用事があるのかと思った。」
「…あぁ、まあね。でも日直サボったりはしないよ。」
「大事な用事はあるんだ。」
葉月がポツリとした声で言った。
「俺が帰っちゃっても、自分一人でやればいいやって思ってた?」
「え……うん…」
葉月は頷いた。
「責任感強めで、流れと相手に合わせちゃうタイプ…か。」
自分の性格を言い当てられ、葉月はギクッとする。
「…羽生くんには関係ない…」
羽生の口癖を真似て、ツンとした態度で言った。
「まぁそうだけど、少なくとも俺のせいで荻田が大変な思いする必要はないから。なんかあったら言って。」
「……羽生くんて、全然わかんない。」
羽生はまた余裕のある笑みを浮かべた。
他人に無関心なようで、簡単に葉月の性格を見抜いてしまう。
冷たいようで、さり気なく気づかいを見せる。
「上の方は俺が消しとくから、荻田はテキトーに下の方だけ消しといて。」
こうして並ぶと羽生は背が高い。葉月も背が低い方ではないので黒板の一番上まで消せるが、羽生は気づかってくれたようだった。
(…何気に腕がたくましい…)
黒板消しを左右に動かす羽生の腕は、本ばかり読んでいて、スポーツもしなそうな羽生のイメージからは想像できない筋肉質なものだった。
(…趣味、筋トレとか?)
知れば知るほど、よくわからなくなっていく。
放課後
「今日は早く帰らないんだ…」
もう他の生徒は全員いなくなった教室で、日誌に向かいながら葉月が言った。
「だからどんだけ薄情なやつだと思われてんだよ、俺。」
「だっていつも一番に帰るから。大事な用事があるのかと思った。」
「…あぁ、まあね。でも日直サボったりはしないよ。」
「大事な用事はあるんだ。」
葉月がポツリとした声で言った。
「俺が帰っちゃっても、自分一人でやればいいやって思ってた?」
「え……うん…」
葉月は頷いた。
「責任感強めで、流れと相手に合わせちゃうタイプ…か。」
自分の性格を言い当てられ、葉月はギクッとする。
「…羽生くんには関係ない…」
羽生の口癖を真似て、ツンとした態度で言った。
「まぁそうだけど、少なくとも俺のせいで荻田が大変な思いする必要はないから。なんかあったら言って。」
「……羽生くんて、全然わかんない。」
羽生はまた余裕のある笑みを浮かべた。
他人に無関心なようで、簡単に葉月の性格を見抜いてしまう。
冷たいようで、さり気なく気づかいを見せる。