「なんだよ芽衣、間接キスくらいで」

「(キスって言わないで……!)」


不思議なことに――デートをしたのに、遊園地にまで行ったのに。

間接キスという言葉一つで、私は声宮くんを今までで一番、意識してしまう。今が一番デートっぽい、なんて。そんな事を思った。


「も、もうあげる、から!」

「あ?なんだよ。少ししか飲んでねーじゃん。もっと飲めよ」

「(私だって、もっと飲みたかったのに……!)」


泣きそうな、そして恨めしそうな顔で声宮くんを見る。すると声宮くんは「ふぅん」と言って、背を曲げて、私に顔を近づける。

「え!」と驚いた私は、ベンチの背もたれいっぱいまで、極力後(あと)ずさった。


「な、なに……?」

「いや、芽衣もそんな顔すんだなって思って」