「(あ、魔法が解けた……)」


残念、と思うと同時に、もう一度「すごいね」と声宮くんを褒める。きっと、たくさん練習したんだろうなぁ。

声優の声宮くんって言ったら、世間でも知られている、超有名人だもんね。


だけど声宮くんは、私が褒めた途端に静かになった。あれ?今までの勢いは、どうしたの?

すると、しばらく黙った後に。声宮くんは、ポツリと零す。


「いくら凄いって言われても――本当に出したい声は、もう出ないけどな」

「え……?」


いつになく、おしとやかに喋る声宮くん。暗いから顔がよく見えないけど……その声色は、なんだか落ち込んでいるみたいだった。


「声宮くん、どうし、」


どうしたの――?と言おうとした、その時だった。

ポンと、私の肩に重みが乗りかかる。


「声宮くん……いくら手を繋ぎたいって言っても、肩に手を置かれるのはちょっと」

「は?」