「なんですかオバケですか早く走りましょう声宮くん!!」

「いや、ここ走るの禁止だっての……はぁ、まあいいや。ほら、ゆっくり歩くぞ」


オバケは全速力で走るのに、私たちは走るの禁止ってどういうこと――と思いながらも、声宮くんの手を強く握って、目を瞑ったまま進む。

私は怖さのあまり目が開けられないから、全てを声宮くんに委ねることにした。お願い声宮くん。私をゴールまで連れて行って……。


「どうか来ませんようにオバケが来ませんように来ても私を襲いませんように!!」

「横でお経のように喋るな。うるせぇ」

「今お経とか言わないで……!」


すると声宮くんが「チッ」と舌打ちをする。私をここに連れて来た張本人なのに、私を面倒くさそうに扱うのは解せない……。

だけど、声宮くんはこんな事を提案した。それは、私が怖くないようにする、おまじないみたいなもの。


「芽以、怖がらないで」

「え、何?今の声」


声宮くんとは違う声。すごく、優しい声。すると、声宮くんが「俺の声」と、あっけらかんと言った。


「え?今の声宮くんの声!?」