「ッ!」


私の名前をサラリと言うから、不覚にもドキッとしてしまった。私の名前を知ってたんだ、っていう驚きと。何のためらいもなく呼んでくれたっていう、少しの嬉しさと。


「(普段は意地悪なのに、こういう時だけ意地悪じゃない声宮くんは……ズルい)」


どうやら私は、声宮くんの「気まぐれな優しさの1割」に弱いみたい。

声宮くんの手を掴むべきじゃないって思ってるのに、私は恐る恐る手を伸ばしてしまう。フルフルと、震えながら。


「(掴んじゃダメ、掴んじゃダメ……っ)」

「……」


まさに押したり引いたりの私の手。だけど、そんな優柔不断な私の手は――待ちきれないと急かされた声宮くんの手によって、強引に掴まれる。


グイッ