そんなことを考えている私を気にも留めず、にこにこと合いそうよく笑う野坂先輩。

ふわっと笑った瞬間、女の子たちの黄色い悲鳴が上がる。

うわあ、イケメン。

こんなに注目されたらつかれそうだけど、野坂先輩は慣れてるのかな?

......慣れてそうだ。




「の......野坂先輩、どうしたんですか......?」

「先輩って堅苦しいから好きじゃないんだよね」

「で、でも私にとっては先輩ですぅっ」

「......うーん」




呼び方についての議論が始まってしまった。

「さん」のほうがよかったのかな、でもそれは失礼でしょう、そこは素直に「先輩」と呼びなさい、でもその呼び方堅苦しいから好きじゃないって言ってたわよ、だけど、でも、(以下略)

うんぬんかんぬん、と呼び方を考える。

ここは「さん」付けのほうがいいのか、それとも「先輩」のほうがいいのか。

フっと野坂先輩が口角を上げる。




「洲守夜亞」

「......え、えぇと、その」




サラリと名前を呼ばれる。

フルネーム。




「......放課後、また生徒会室に来て?」

「ぁうっ......い、いや、何を言って......」




野坂先輩、何を言ってるんだろう......。