シエナの前には水浸しになったペンケースや教科書があった。
悲しげな彼女を放っておくことなんてできなかった。


「一体どういうことだ?」

「なんでもありませんから」

「シエナ、俺にはなんでも相談してくれと言ったろう?力になりたいんだ」

「ローリー殿下、実は……」


シエナの話を聞いて驚愕していた。
マティルダがシエナを虐げているという事実は信じ難いものだった。
最近のマティルダといえば令嬢達とのんびりお茶を飲んだり談笑している姿しか見なかったからだ。

(まさかあのマティルダが……?)

以前ならば分からなかったが、最近は無害そのものだ。
少なくともローリーにはそう見えた。
最初は疑ったがシエナが嘘をついているとも思えない。
そしてシエナを虐げる理由を聞いて更にローリーは驚くことになる。


「マティルダ様は、私がローリー殿下によくしてもらっているのが気に入らないんだわ」

「……なんだと?」

「ローリー殿下に近づかないで、と何度か警告を受けたんです。だけど、私……っ」