ライボルトかシエナの二人がマティルダに攻撃を放てば、返り討ちにする準備はできている。
その魔力の強大さは二人も肌で感じているだろう。
マティルダはその場に似つかわしくない優しい笑みを浮かべた。


「あら、どうしたのかしら……」

「……っ!」

「ッ!?」

「いつでもどうぞ?」


マティルダがそう言うと、二人は激昂したように攻撃を放とうとする。
マティルダも魔法を放とうと片手を上げた時だった。

そんな時、暗い森から見覚えのある人物が出てくる。


「──おいっ!二人とも何している!?」

「ローリー殿下……?」

「マティルダは無傷で連れ帰るべきだと言っただろう!?」

「だってぇ……」


マティルダは解放しようとした力を押さえ込んだ。

(ローリー殿下が何故こんなところに……。ブルカリック王国の海が荒れたのは魔族ではなく、まさか本当にローリー殿下が?)

この時、ベンジャミンが言っていたある言葉が頭に浮かんだ。
彼がなぜ色んな国を救っていたのか、マティルダは理由を聞いたことがあった。
大きな力で自然災害などが起こる場所にベンジャミンが向かうのは彼の育ての親である『師匠』を探すためだったらしい。