しかし目の前を虫のように飛ぶ光にさすがに苛立ったマティルダは光をパチンと両手で叩いてから捕まえて窓に捨てるというのを繰り返していた。

(もう……!しつこいなぁ)

次第に弱くなっていく光が弱々しく部屋に入ってくる。
もう捕まえるのも面倒になったマティルダは少し硬めのランチョンマットを丸めて窓の外に打ち返していた。

(打てたり、掴めたりするってことはやっぱり虫なのね!)

帰ったらベンジャミンに虫除けを置かないかと提案しようと心に決めて今度こそ窓を閉める。
光はやっと部屋に入ってこなくなったとホッと息を吐き出した瞬間に、屋敷の外にドンッと何かが落ちる音がして、マティルダは肩を揺らした。


「何……?」


扉を開けて身を乗り出すと、焦げ臭い匂いが辺りに漂っている。
暗闇の中、懸命に辺りを見回すといつもベンジャミンと過ごしているお気に入りの花畑が焦げて穴が空いていることに気づいて、側にあったランプ持って慌てて外へと駆け出した。
焼き爛れている花だったものに駆け寄ると、地面が大きく抉れている。
マティルダは黒くなった花びらを掴んだ。


「ひどい……!」