やっと物語の呪縛から解放されたのかもしれない。
そう思うと今までの努力が報われるような気がした。

足を進めていると、ベンジャミンが優しくマティルダの手を握った。
表情に出やすいのもあるだろうが、ベンジャミンはいつもマティルダを気遣ってくれる。


「マティルダ、大丈夫?何か嫌なことを思い出したの?」

「いえ、大丈夫です!これからどんどん楽しい思い出を作っていきましょう。だからベンジャミン様、また買い物に行きましょうね」

「買い物は………………考えておくよ」

「そんなこと言わないでください!」

「マティルダは危機感が足りないんだ。隙がありすぎるんだよ!」

「そうでしょうか?」

「そんなところが可愛いからいいんだけど……」


ベンジャミンはいつだって真っ直ぐな愛情を向けてくれる。
マティルダになるまではよくわからなかった恋する気持ちが、こんなにも幸せをくれることに改めて喜びを感じていた。


「マティルダに何かあったら……この世界を滅ぼしちゃいそうだ」

「……えっ!?」