太陽が徐々に沈んで、空がオレンジ色に染まっていく。
ベンジャミンと森の上を歩きながら、マティルダは大切に小さな箱を抱きしめていた。

二人きりになるとベンジャミンは黒い鳥の仮面を外した。
ベンジャミンの視線はマティルダが持っている箱にある。


「そんなにあの店が気に入ったの?」

「えっ……!?」

「ずっと大切そうにその箱を持っているから」


マティルダの様子が違うとすぐに気づくベンジャミンの観察眼。
マティルダのことに関しては本人よりも知っているような気がしていた。
しかしこの中身はまだ見せることはできない。
じっとりしたベンジャミンの視線がマティルダの手元にある。
折角のサプライズが台無しになることだけは避けたいと思い、誤魔化すために言葉を探していた。


「こうして自分で選んだものを買うのは初めてだったので楽しくなってしまって。以前は公爵家に相応しいものを、と流行りのものや好きなものをあまり身につけられませんでしたから」

「マティルダ……」

「ベンジャミン様が似合いそうだと言ってくださった髪飾りを買ったのですが、なんだか嬉しくて……。うちに帰ったら似合うかどうか見てくれますか?」

「……!うん、もちろんだよ」