「…………」


これ以上、店員に迷惑を掛けたくはないのと不審に思われたら困るとマティルダはベンジャミンの背を押した。
丁寧に包んである二つの袋はしっかりと箱の中に入っているようだ。
マティルダは振り返って、店員にお辞儀をしてから店を出た。

(よかったわ……!ちゃんと買えた!これでベンジャミン様にお礼ができるわ)

マティルダは箱を持ちながら密かに喜んでいると……。


『……ねぇ、マティルダ』


ベンジャミンが急に足を止めたため、マティルダはそのまま彼の背中に勢いよく激突してしまう。
そしてぶつかった鼻を押さえた。


「いたた……」


鼻を押さえていると、ベンジャミンは振り返ってマティルダを包み込むようにして抱きしめた。


「急に立ち止まって、どうしたのですか?」

『…………』

「ベンジャミン様?」

『やっぱりマティルダが他の人に触れられるのは嫌だ。マティルダを誰にも渡したくない』


暗い雰囲気をどうにかしようと、マティルダは「今度から気をつけますね」と言って声をかけるがベンジャミンは大きく首を横に振ってマティルダを包み込むように抱きしめている。