「ベンジャミン様、どうされましたか?」

「マティルダとの距離が近い。離れてくれ」

「も、申し訳ございません」


男性店員がすぐにマティルダと距離を取った。
ベンジャミンはマティルダを抱きしめたまま動かない。
彼がこのまま近くにいるとプレゼントの話ができないため、戸惑いつつ声を掛ける。


「あのー……ベンジャミン様」

「…………」

「店員さんと、もう少しお話ししたいのですが……」

「この辺がモヤモヤする」

「え……?」


ベンジャミンは胸元を押さえている。


「それって……」

「これ以上、近づいてほしくない」

「!!」


マティルダは思っていた。
ベンジャミンが言っているモヤモヤはヤキモチではないかと……。
しかしベンジャミンには、その気持ちを現す言葉が分からないのかもしれない。
マティルダは怯えている男性に「申し訳ありません」と言ってからアイコンタクトを取る。
男性はベンジャミンとマティルダを交互に見て頷いた。


「で、ではそろそろ行きましょうか!」

「何も買わないの?」

「ベンジャミン様が勧めてくださった髪飾りを買いましたわ!少し手を加えてもらったので時間が掛かったのですよ。それよりも他に寄るところはたくさんありますから早く行きましょう!ねっ?」