『マティルダ、欲しいもの決まった?』

「ひ、久しぶりにお店にきたので迷ってしまって……!もう少しだけよろしいでしょうか?」

『うん、もちろんだよ。あ、これなんかどう?』

「わぁ……!素敵ですね。可愛い髪飾り」

『きっとマティルダに似合うよ』


仮面はつけているが、ベンジャミンが微笑んでいるような気がしてマティルダも笑みを返した。
店員に呼ばれたマティルダは慌てて側に向かう。

そして宝石を売ったお金でベンジャミンへのプレゼントが買えるのかを聞くと店員は笑顔で頷いた。
お金が足りたことに安堵してマティルダはホッと息を吐き出す。
男性店員の耳元でベンジャミンと自分の名前を彫ってもらうように小さな声で頼んでいた。

「すぐにできますので少々お待ちください」

時計に二人の名前を掘ることはブルカリック王国では夫婦がずっと同じ時間を過ごせるようにと願いが込められて贈られるらしい。
プレゼントと用に包んでくださいと頼んで、バレないように先程、ベンジャミンが勧めてくれた髪飾りを一緒に包んでもらうように頼む。
ベンジャミンに「包んでもらっているのでもう少し待っていてください」と言いながら、店員が帰ってくるのを待っていた。