マティルダがブルカリック王国の城下町に足を踏み入れた瞬間、以前と違う変化にすぐに気づくことができた。

(あれ……?町ってこんなに静かだったかしら)

あんなに賑わっていた町も人はまばらで、店自体が開いていないことに気づく。
国で一番、栄えているはずの場所が静まり返っていることに驚いていた。
マティルダは様変わりしてしまった町を見ながら歩いていく。

久しぶりにお気に入りだったレストランに向かい、昼食を食べていたが店員もどことなく元気がないような気がした。
あんなに活気づいていた店内も今はガラガラで人がいない。


「こんなに静かだったかしら。町が……なんか以前と違いますね。ベンジャミン様は何か理由を知っていますか?」

『…………』

「ベンジャミン様?」


仮面をつけているため、ベンジャミンの表情は窺えない。
静かに紅茶のカップを持って、中身が消えていくのを見ていると、ベンジャミンの隣に浮かぶ文字。


『マティルダの国外追放にガルボルグ公爵は怒り、他の貴族達も王家に協力しなくなった。その責任を取るためにマティルダの兄は辺境に送られることになっている。そしてマティルダを傷つけた王太子はもうすぐ廃嫡されるそうだ』