「ありがとうございます。ベンジャミン様に出会えてよかった」


イグニスはベンジャミンに炎をもらいながら少しずつ元の姿に戻るために暫くはこの家で暮らすそうだ。
しかしその前にこの森でゆっくりと体を休めるそうだ。
トニトルスはその間、イグニスが逃げ出さないように見張っているらしい。
マティルダが「心配なのね」微笑むと、トニトルスは照れ隠しなのか『うるさいわね!』と言って、暴れるイグニスを連れて去って行った。

また一段と賑やかになりそうだと思いつつも、マティルダはベンジャミンと笑い合っていた。


* * *


それから外に出るとマティルダが喜ぶというのをベンジャミンは学んだのか、少しずつ町に買い物に連れて行ってくれるようになった。
マティルダはベンジャミンと一緒に行ったことのない国々を回っていた。

(まさかこんな風に色々な国に行けるなんて夢みたいだわ!)

ベンジャミンはブルカリック王国にいくことだけは「絶対に嫌だ」と頑なに拒否していたが、マティルダはブルカリック王国にある城下町でどうしても買いたいものがあった。

(いつもお世話になっているベンジャミン様に御礼をしたいもの!どうにか質屋に寄って、パーティーにつけていた宝石を売って、ベンジャミン様にプレゼントしたい……!)