確かにイグニスとトニトルスがいなければベンジャミンと出会うこともなかったし、こうして幸せな生活を送ることができなかったかもしれない。
それにマティルダもトニトルスと仲良くなったきっかけは雷魔法だ。
この縁を繋いでくれていたのかと思うと、なんだか嬉しかった。


「わたくしはあの時、ベンジャミン様に会えてよかったと思いました」

「え……?」

「ベンジャミン様の前だけでは、本当の自分でいることができたんです。そうでなければ、とっくに潰れていたような気がします」

「嬉しいよ。僕もマティルダに会える時間を密かに楽しみにしといた。話を聞きながら僕が婚約者だったら、こんな辛い思いをさせない……僕なら守ってあげられるのにって」

「……!」

「僕ならマティルダを笑顔で幸せにしてあげられるのに……心の中でずっとそう思っていた」


マティルダはベンジャミンに寄りかかるようにして手を握った。

彼がそう思ってくれていたのなら、あのタイミングでマティルダを助けてくれたのも納得である。
崖の上から足を滑らせた時、ベンジャミンがいてくれなかったらと思うとゾッとする。
きっとマティルダはこの世界から消えていたのだろう。