「だからマティルダからイグニスの気配がしたのか」

「わたくしから……?」

「ああ、そうなんだ。トニトルスがイグニスの気配を感じるっていうから近づいてみたものの、よくわからなくて……もっと近づいて調査しようとしたら都合よくガルボルグ公爵からマティルダの講師を提案されたんだ」

「だからわたくしに魔法講師を引き受けてくださったのですね」

「うん」


人前に滅多に姿を現さないベンジャミンがマティルダの講師を引き受けたまさかの理由に驚いていた。
ただの気まぐれかと思いきや、ちゃんとした理由があったようだ。
そしてベンジャミンのペットかと思っていたイグニスとトニトルスは元は師匠のもので、他にも黒や青など様々な鳥を飼っていたそうだ。
鳥達はそれぞれ不思議な能力を持っているらしい。


「師匠が僕のために二羽を置いていってくれたんだ」

「そうだったんですか!?」

「ただの偶然かもしれないけれど、まるでこうなることがわかっているかのように二羽を残していってくれた」

「え……?」

「イグニスとトニトルスはマティルダのところに導いてくれた」

「……ベンジャミン様」


そう言って柔らかく微笑むベンジャミンの姿を見ているとこちらまで嬉しくなってしまう。