「今はそんな場合じゃ……!」

『馬鹿イグニスを助けるために、大量の魔獣を追っ払って、だいぶ力を使っちゃったんだもの!まったくアンタのせいだからね!』


トニトルスがそう話している間に赤い鳥を包んでいた炎がゆっくりと消えていく。
黒焦げになった鳥を見たくなくて、マティルダは手のひらで目元を覆っていると、トニトルスに『早くしてよ!』と頭を突かれる。
手を使って払っていると目の前で赤い鳥がゆっくりと起き上がって羽根を広げているのが見えた。
マティルダはその姿を見て目を見開いていた。


『はぁ……今回はさすがに死ぬかと思った。まぁ、死んでも生き返るんだけどな』

「え……?」

『おぉ、あの時の嬢ちゃんじゃんか!いやー、あの時は助けてくれてありがとな!』

「???」

『オレだよ、オレ!羽根をむしろうとしてナイフを持っていた男に追いかけ回されていた時に助けてくれたじゃんか。結局、ビルから落ちちまってビックリだったよな」

「…………?」

「姿も違うし、わからなくとも無理ねぇか』


あの時、ビル、ナイフ、追いかけまわされていたという単語を聞いてマティルダになる前のことを思います。
それと尾の長い赤い鳥を助けた時に追いかけられて背中から落ちてこの世界に来たのだ。