魔族とは魔獣と違って、数は少ないけれど強大な力を持っていると聞いたことがあった。
見た目は人に近いものがあるが、全く別の存在らしい。
マティルダになってから長いが未だに魔族を見たことがなかった。

そんな魔族に育てられたベンジャミンは、強大な力を制御するために厳しい指導を受けたようだった。
魔法を習い、生活に必要なことも教わったのだと懐かしそうに話してくれた。


「けれど師匠は突然、僕の前から姿を消した」

「…………」

「このウサギの仮面も師匠が彫ってくれた。これが一番のお気に入りだ」


ベンジャミンが手品のように何もない空間から取り出したのは黒いウサギの仮面だった。
他にも師匠が置いていった色んな形をした仮面を持っているそうだ。


「どうして仮面を?喋れるのに喋らなかったのはどうしてですか?」

「師匠がずっとそうだったんだ。これと同じ白いウサギの仮面と、こんな感じの服を着て空中に浮かぶ文字で会話していた」