腹部に回された腕と「そんなに走り回ったら危ないよ?塔に戻る?」という、ベンジャミンの恐ろしい顔を見つつマティルダは首を横に振りながらヘラリと笑みを浮かべた。
「気をつけてね」と言って手を離したベンジャミンの言葉に頷いた。
彼に御礼を言ってから体を起こす。

『一緒に』という言葉通りに、そのままベンジャミンの手を握りながら塔の周りをグルリと一周歩いていく。
ただ歩いているだけなのに感動してしまうのは、ずっと家の中にいたからだろう。

上からはよく見えなかった色とりどりの花が咲いている場所にベンジャミンと共に座り、一面に広がっている場所で花を摘んで、ベンジャミンの長い髪に飾りながら遊んでいた。


「マティルダ、何してるの?」

「ふふっ、ベンジャミン様の髪が綺麗なのでつい」

「マティルダの髪も綺麗だね」

「なんだかベンジャミン様が最初にわたくしの周りに花を飾っていた時の気持ちを思い出しますわ」

「マティルダは花が好きかと思ったから……」


初めてここに来た時に上も下も右も左も花だらけだったことを思い出していた。
マティルダはキョロキョロと辺りを見回しながら立ち上がり、ベンジャミンの手を引いて走り出した。


「ベンジャミン様、今度はあちらに行きましょう!」

「う、うん!」