マティルダはそう言ってアピールするように頬の肉を摘んだ。
美しくスタイル抜群だったマティルダだが、ここ最近はベンジャミンに甘やかされすぎて少し体が重い。

ベンジャミンの瞳がスッと細まった。
いつもなら「な、なんでもないです!」と首を横に振るところだが、今日は引き下がることなく粘ると決めていた。
この話に持っていくだけでもやっとなのである。

(このままだといつものようにダメと言われて終わっちゃう……!)

ベンジャミンは一気に不機嫌モードである。


「それは、やっぱりあの国に帰りたいということ?」

「違いますっ!この辺の外に出て気分転換をしたいのです!」

「…………マティルダが傷つくのは嫌なんだ」


ベンジャミンはこれだけは絶対に譲るつもりはないようだ。
マティルダはこのもどかしい気持ちをどう伝えればいいか分からずにやきもきしていた。

(どうしたらベンジャミン様にわたくしは簡単に怪我をしないし大丈夫だって伝わるのかしら……)

そもそも会話内容が噛み合っていないのだが、二人はそれに気づくことはない。