「ですが、わたくしは国に帰るよりも塔の外に出たいです!」

「…………!」

「外に自由に行き来できたらもっと幸せです」

「マティルダが外に……」

「もちろん、ベンジャミン様の話を聞いて、森が危険なことも理解しています。ですがわたくしは小さな魔獣ならばひとりで倒せますし、ベンジャミン様に鍛えていただいた力もありますから、多少のことでは負けませんっ!」

「…………」

「これから二人で楽しく暮らしていくためにも、そろそろ外に出てもいいのではないでしょうか!?」


マティルダは一カ月も外に出ていない。
この生活は好きだが、さすがにこのままだとどうにかなってしまいそうである。
こちらもトニトルスに相談してみたが、やはり「ベンジャミンに直接、説得した方がいいわよ」と言われてしまったのだ。
いつもはベンジャミンの見えない圧に屈していたが、今日こそはと一歩踏み出したのだった。


「でも……心配なんだ。もしマティルダに何かあると思うと正気じゃいられない」

「わたくしもこのままずっと塔の中にいたら正気ではいられません!」

「…………!」

「や、やっぱり気分転換は必須だと思うのです……っ!それにたまには裸足で野原を駆け回りたいです。それに甘いものの食べすぎて太ってしまいました」