「そんなことありませんよ?」

「僕はマティルダの意思を無視して、ここに閉じ込めている。マティルダは外に出たいことも知ってる。でも僕は怖いんだ」

「…………?」

「今まで心から大切だと思えたのも、自分から欲しいと思ったのもマティルダが初めてだった。この気持ちをどう伝えればいいかわからない。マティルダが僕の見えないところに行ってしまうことが許せないんだ」

「……ベンジャミン様?」

「マティルダを好きだと思うほど、その気持ちが強くなる。恋人でも夫婦という言葉を使っても足りないんだ……全部が、マティルダの全てが欲しいと思ってしまう」


両手で顔を覆って体を丸めているベンジャミンの背をそっと撫でた。
ベンジャミンが何を言っているのか、半分わからないマティルダだったが、今まで自由に振る舞っているように見えて、彼は彼なりに自分の気持ちと戦っていたということだろう。


「でも本当はマティルダは僕とではなく、ブルカリック王国で暮らした方が幸せなんじゃないかって思ってしまった。あの国はマティルダを必要としている」

「必要としている?わたくしを、ですか?」

「今までは自分がよければいいと思っていたけど、マティルダが笑っていてくれないと嫌なんだ。マティルダが幸せでいることが僕の幸せなのに、僕のマティルダを閉じ込めてしまいたいって気持ちが邪魔をする……僕はどうしたらいい?」