そのまま甘い時間を過ごしていたのだが、結局原因もわからないままだ。
根本的な解決にはなっていないのかもしれないと思い、マティルダは顔を上げた。


「ベンジャミン様になにか悩みがあったら聞きますから!」

「悩み……?」

「数日前からベンジャミン様に元気がないことが心配だったんです」

「……!?」

「何かあったのですか?」

「マティルダ……」


やはり心当たりがあるのか珍しく反応を返したベンジャミンは眉根を顰めた。
それから唇を開いたり、閉じたりしている彼が何かを伝えようとしているのではないかと、マティルダは改めて彼の隣に座り直して手を握りながら言葉を待っていた。

先程、開いた窓からな気持ちのいい風が吹き込んで、ベンジャミンとマティルダの髪を揺らした。
するとベンジャミンは小さな声でポツリと呟いた。


「……マティルダはブルカリック王国に帰りたいんじゃないかと思ったんだ。こんな森の中じゃなくて、あの国で貴族の令嬢として暮らしていた方が……」