マティルダは無意識にベンジャミンの前に握手を求めるように手を出した。
まるで「付き合ってください」と告白してオッケーだったら手を握ってください、と言わんばかりの対応だが、マティルダは焦りすぎてそのことに気がつかない。
頭の中では汗ばんだ手を一回拭いたいと思いと、これからどうすればいいのかという戸惑いがぶつかり合っていた。


「マティルダ、ありがとう」

「わっ……!?」


マティルダは手を掴まれて、そのまま体を引かれるとベンジャミンの上にのしかかるようにして倒れ込んだ。
自分の金色の髪で視界が覆われてしまい、髪を掻き上げつつもベンジャミンを見ると、彼は先程とは打って変わって心底嬉しそうに微笑んでいる。
まるで子供がお気に入りのぬいぐるみを抱きしめるように、ベンジャミンはマティルダの髪を優しく撫でながら笑みを浮かべている。


「マティルダの気持ちが聞けて嬉しいな」

「ベンジャミン様、元気になりましたか!?」

「僕はずっと元気だよ?」

「???」

「でも、もっと元気になった」


マティルダはベンジャミンの言葉の意味がわからずに首を捻る。
しかし何故かわからないがベンジャミンが上機嫌になったような気がして、安心感に胸に耳を当てるようにして擦り寄った。