「え……?」

「……っ」


我ながら大胆な発言をしてしまったと気づいて口元を押さえた。
恐る恐る顔を上げると彼と目があった。
これでもかと見開かれた瞳に、やってしまったという後悔と羞恥心が一気に襲ってくる。

(もっといい伝え方があったはずのに……っ!)

それにベンジャミンの言葉を遮ってしまったと聞き返そうとするけれど、今更かと思い唇を閉じる。
心の中ではベンジャミンを元気づけたいと思っていても、上手く言葉がまとまらない。
頭の中で言葉がぐるぐると駆け巡り、考えている最中にベンジャミンから声が掛かる。


「マティルダ、それって……本当の気持ち?」

「あのー……あのですね!つまりわたくしはこの生活が好きですし、そのっ、今は毎日が幸せだと思っておりまして、ブルカリック王国に戻りたいとか、以前のように暮らしたいとかは思っていないということをお伝えさせていただけたらと思いまして……はい!」

「…………!」

「だ、だからベンジャミン様、元気を出してくださいっ!」