マティルダはベンジャミンの手を取り、座っているソファの隣に腰掛けてから手を繋いだ。
これだけでも精一杯になっていたが、このままではいけないと気合を入れて少しずつ距離を詰めて肩にもたれようとした時だった。


「ねぇ、マティルダ」

「ひゃい……!?」


マティルダはベンジャミンの肩に寄りかかろうとしていたのを制止されたのかと思い大きく肩を揺らした。
こちらを真剣に見つめる紫色の瞳は、僅かに揺れ動いているような気がした。

(これは……もしかしてキスの流れ?いや、違うわよね?)

彼の無言で何かを問いかける様子を見ていると胸が騒ついてしまう。
こんな時、男性経験が乏しいことが嫌になる。

(ああぁぁっ、もう!こんな時はどうしたら相手を元気づけられるの?ベンジャミン様はなんて呼んだら喜んでくれるの!?ベン……?もしくはジャミン?恥ずかしくて無理……!)

慌ててパニックになっていたマティルダは兎に角、自分の気持ちを伝えようと考えを巡らせていた。

(何か言わなくちゃ……!ベンジャミン様が安心するような言葉をっ!考えるのよ、マティルダッ!!!!)

そして思いきって自分の気持ちを伝えようと口を開いた。


「マティルダはあの国に帰っ……」

「───わたくしはベンジャミン様と一緒にいたいですッ!!!!!!」