「わたしはベンジャミン様と結婚して、ここじゃない場所で幸せに暮らすから」

「は……!?」

「大丈夫、あの人は必ずわたしを好きになる」


あまりに自信満々に言うものだからローリーは心を揺さぶられていた。


「ほんとに……?」


ローリーの口から本音が漏れる。
心の中では馬鹿馬鹿しいとは思っていた。
こんな陳腐な作戦、上手く行くはずないと……。

けれどもしも、があるのだとするのなら。
このまま今までのものを失うのなら、賭けてもいいと思った。
そしてあんなにもシエナを大切にしたいと思っていた気持ちはなくなっていた。
むしろシエナが犠牲になり、マティルダを得ることができるならそれでいいと。

ローリーの唇が弧を描いた。


「案内してくれ……」

「まぁ、さすがローリー殿下!話が早いですわ」

「行こう。全てを元に戻すんだ」

「ああ、そうしよう」

「ウフフ……」


ローリーも黒いローブを受け取った。
まるでこの選択をすることをわかっていたようだ。

シエナが再び光の玉を手のひらに浮かべる。
ローリーは城の裏手へと周り、暗闇へと進んでいった。