「ローリー殿下……落ちいて私の話を聞いてください」

「……ッ」


シエナはローリーが怒っているにも関わらず、いつものようにニッコリと笑いながらこちらに近づいてくる。
そしてローリーの手を優しく握った。
振り払おうとしても、凄まじい力で押さえられている。


「今すぐ離せ……っ」

「ねぇ……ローリー殿下。この物語はおかしくなってしまったわ」

「は……?」

「元に戻しましょう?だからわたしと一緒に来て下さい」


シエナは淡々とそう語った。
それにはローリーも動揺していた。


「意味のわからないことを言うな……!それと俺の前に二度とその顔を見せるな!」


ローリーがそう言うとシエナは一瞬だけ真顔になると、口角をあげてニタリと笑った。


「ウフフ、本来の形を取り戻せるのに残念だわ。ライボルト様、行きましょうか」

「ああ……」


ライボルトの目の下はクマがひどく、頬が痩せこけている。
シエナの言葉に素直に頷いている。
こんな状況に追い込まれているにも関わらず、自信満々の二人を見て、ローリーの頭にある言葉が過ぎる。

(もし、本当に元に戻せるのなら……)