何も耳に入らずに呆然としていると、目の前で大きな炎が上がる。
驚いて顔を上げると、ゆらゆらと揺れる炎に飲まれていくソファが目に入ってローリーは息を止めた。


『こうなりたくなかったらマティルダを利用するなんて思わないことだ』

「あ……」


先程見ただけでも風に火にと、ベンジャミンは普通ならばあり得ないような色々な魔法を使っている。
まるで手品のように今度は焼け焦げたソファを凍らせて、パチンと指を鳴らすと一瞬にして砕け散る。
真っ黒な塵になったソファだったものを見て、背筋がゾッとした。


『マティルダは僕の大切な人だ。彼女の幸せのためだったらなんだってする』

「は…………?」

『マティルダは僕と共に毎日、笑顔で幸せに暮らしている。お前と違って僕はマティルダを絶対に傷つけない』


ローリーは耳を疑った。
国外追放されたはずのマティルダは幸せに暮らしているのに、ローリーには廃嫡の危機まで迫っている。
あっさりとベンジャミンに鞍替えして幸せに暮らしているのだと聞いて悔しさと怒りが湧いてくる。

(こんなのはあってはならない!間違っている……っ!)