何事かと部屋に入ってきた侍女達が大きな悲鳴を上げたが「助けて」ということもできない。
すると騒ぎを聞きつけたのか父や騎士達が部屋にやってくる。


「ベンジャミンか……!」


父が声を発するのと同時に、ビュービューと吹き荒れていた風が止んだ。
ローリーは壁から滑り落ちるようにしてその場に座り込んだ。
いつもならば魔法で対抗できるのに、ベンジャミンに対しては何もできなかった。

(信じられない……!じ、次元が違う。違いすぎる……!)

王族故に魔法に関しては自信があったが、それが反撃する間もなく赤子のようにねじ伏せられてしまった。
その衝撃もありローリーが動けないでいると、ベンジャミンは宙に浮かびつつもこちらに歩いてくる。
父の後ろに控えている騎士達も恐怖からか震えている。
そして再び空中に文字が浮かぶ。


『これ以上、マティルダに関わるな』

「ベンジャミン、説明してくれ。マティルダは生きているのか!?」

『それを知ってどうする?』


ベンジャミンがグッと父に距離を詰めたが、自分と違って父は動じることはなかった。