ライボルトではなく、騎士団長の息子であるバルーゼが手のひらに炎を浮かべていた。
赤い短髪がぼんやりと暗闇の中でゆらめいていた。
彼は眉を顰めて困惑した様子だった。


「ローリー殿下、これは一体どういう事だ?何が起こっている!?」

「説明は後だ。バルーゼはその火で城の蝋燭をつけて回ってくれ」

「わかった!」

「ライボルト、城や町に明かりを届けるために一緒に来てくれ」

「…………っ」

「ライボルト?」

「あ、ああ……そうだな」


苦い表情を浮かべるライボルトと共に、電気を城や町に届けることができる蓄電室へと向かった。
他にも城には貯水庫や火種を貯められる場所があり、城下町に届けられている。

城下町以外では少し生活の質は落ちるが、魔法が篭った魔石などを買うことによって生活を豊かにできる。
恩恵を直接受けることができる城下町は人気ではあるが、納める税金が高い。

ローリーも日課として水魔法を魔石に込めたり、城の貯水庫に水を出して民達のために魔法を使っている。
魔法を使わないほどに力は落ちていき、魔力は弱まってしまう。
しかしそれは辛い訓練や作業を繰り返さなければならず、面倒であることには変わらない。

限界はあれど身にたまる力を発散させてポンプのように循環させていくことで魔力の容量を増やしていく。