「何度かお前も会ったことがある。しかし彼は人嫌いに加えて、魔法で他者から認識しずらいように調整しているそうだ」

「認識しづらくする……?そんな魔法、聞いたことがないですよ!?」

「そうだろうな。ベンジャミンは全魔法属性を使いこなせるという噂だ」

「…………そんなことって」

「そうでなければ説明がつかないことが多すぎる。奴は化け物だ。しかし、もしマティルダを気に入っているのなら、他国を出し抜けるこれ以上ない大きなチャンスだったのにっ!とりあえずガルボルグ公爵に確認せねば」

「父上、これは……っ」

「やはりマティルダは素晴らしい力を持っている。なのにそれを捨ててしまうとは愚かにも程がある……!お前の目は節穴どころか何も見えていないのか!?」


壁を叩いて悔しそうに唇を噛んでいる父の表情を見る。
ローリーの不貞行為は許されないのに、マティルダは栄誉として扱われることが納得できなかった。

(マティルダはそんな凄い奴に認められたというのか?いや違う……!まさか俺への当てつけに……?)

そしてもう一つ、隣にいるシエナにも異変が起こっていた。


「あの女ッ!あの女っ、本当にありえないわ……!最低よッ」

「シエナ……?」

「まさか隠れてベンジャミン様に近づいていたなんて……!」