あまりの勢いにローリーは仰け反った。
しかしこちらにはちゃんとした理由があると、ローリーは説明するように話していく。
学園でマティルダがシエナに対しての数々の仕打ち、仲間の令嬢達を巻き込んで、シエナを追い詰めていったこともそうだ。


「マティルダがそれを行ったという証拠は?」

「だからシエナが……」

「シエナ、といったか。レディナ男爵家の令嬢か。今ローリーが話したことは全て事実なのか?」

「はい、陛下……!ローリー殿下がわたくしに優しくしてくださることが気に障ったみたいで……」

「影でコソコソと虐げるなど、次期王妃として、俺の婚約者として相応しくありませんっ!」


しかし父から返ってきたのは意外な一言だった。


「それで……?」

「…………え?」

「まさかそれだけか?」

「な、何を言っているのですか?今、学園でのマティルダの卑劣な行為の数々を今、話したではありませんか!」

「他に誰がその場面を見ている?名前を言え」

「はい……?」

「誰か他にそれを証明するものはいるのかと聞いているんだ」


ローリーはそう問われてシエナに視線を向けた。
シエナは顎に手を当て、潤んだ瞳でこちらを見ている。
苦い表情を浮かべると、両親は荒く息を吐き出して「証拠はあるのか!?」と問い詰めてくる。