はやる気持ちを押さえていると周囲は、隣にマティルダではなくシエナがいることを不思議に思っているのか、怪訝そうな面持ちでこちらを見ている。

(皆、あの女の本性を知れば驚くに違いない……!今は俺のように騙されているだけだ)

しかし、明らかに周りとは違って敵意が篭った視線が向けられていることに気づく。
それはマティルダと仲のいい令息や、いつも一緒にいる令嬢達であった。

シエナはそのことに気がついたのか、可哀想なくらいに体を震わせている。
ローリーは怯えるシエナを守るように背に隠してから彼女達を牽制するように睨み上げる。
やはりシエナの言っている通り、マティルダの命令によって嫌がらせを受けているのだと思った。

暫く待っていると、公爵家の馬車が到着したとの知らせを受けた。
現れたのはマティルダだったが、いつもより表情が強張っているように思えた。

振り向くとライボルトは頷いた。
ローリーは作戦通りにマティルダを追い詰めていく。
違うと必死に訴えかけてはいるが、彼女の言い分など聞く必要はない。
証拠もあれば証人もいる。
そしてマティルダは小さな雷を落とした後に、自分の足で会場を去って行った。

(……本当にこれでよかったのか?)