そしてライボルトはマティルダについて気になることがあると話してくれた。
それは魔法訓練として父が呼んだ魔法講師と不貞行為を働いているかもしれないというものだった。
ローリーはその事実に衝撃を受けた。

(あのマティルダが不貞行為……?マティルダは俺のことが好きではなかったのか?では何故、シエナを虐げるような真似を?)

シエナの話しと辻褄が合わないような気がしていた。
その部分を疑問に思ったが、今度はあれだけローリーに気を引こうとしていたくせに、裏では男を邸に連れ込んで平気で不貞行為を働くマティルダを軽蔑していた。

それが背が高く仮面をつけていて、全く口を聞かない不気味な男だそうだ。
魔法を教わるという口実で、森に行ったり、色々な場所に出かけながら密会を繰り返しているらしい。

(信じられない……なんて女だ)

ライボルトの話を聞けば聞くほどに何故か違った意味で胸が苦しくなった。
あれだけ笑顔を見せて媚を売っていたくせに、マティルダはただ『王妃』の地位が欲しかっただけなのだと気づいてしまったからだ。

(この俺を利用するだけ利用して……っ!)

更にシエナは「ローリー殿下やライボルト様の立場が悪くなると思って言えなくて」と、自分がこれだけ追い込まれているにも関わらず、こちらに配慮まで見せている。
どちらを選ぶか……明白だろう。