一日目。

目覚まし時計がけたたましく鳴る音と同時に、順が私の身体を揺り起こした。

「芽衣ちゃん!起きて!今日からジョギングするんでしょ!」

「う、うーーん。」

私は眠い目をこすり終わると、ガバッと布団から飛び起きた。

昨夜押し入れの奥の衣類ケースから引っ張り出してきた、高校の時に履いていた緑色に白い線が入ったジャージと、スヌーピー柄のTシャツに着替える。

「なにその恰好。ダサッ!!」

スニーカーに履き替える私を、順が腕を組みながら見下ろした。

「これしかないんだもん。」

「はいはい。いってらっしゃい。」

順に見送られ、私はマンションを出ると、近くの川沿いまでの道を、ゆっくり走りだした。

ジョギングコースまで行くと、同じくジョギングをしている人達に、私はどんどん追い越された。

私以外のジョガー達は、スポーツブランドのTシャツに短パン、そして黒いタイツにランニング用シューズを履いたガチ勢ばかりだった。

それにしても、いきなり走ったから息が切れて仕方がない。

まだ15分も経たないうちに、私は川沿いにある小さなスペースのベンチに腰かけると、足の力が抜けてしまい、走る気力を失ってしまった。

はぁはぁと荒い呼吸をする私の前を、茶色いトイプードルがリードに引かれてトコトコと軽快に小走りしていく。

「ううっ。私、トイプードルにも負けてる。」

たった一日目で、私の心はポキンと折れたのだった。

そして次の日からはジョギングはせずに、家でラジオ体操をすることにした。

「イッチ・二・サンシッ!ゴーロク・シチハチ!」

「有酸素運動が必要なんじゃなかったの?」

順がニヤニヤしながら、そうまぜっかえす。

「ラジオ体操だって立派な運動なの!」

私はそう言って頬を膨らませ、耳を塞いだ。