「もういいですか? 俺たちこの後、予定あるんで」

「あ、ああ……じゃあな、智世里」

「う、うん……」

 賢太のその消えていく後ろ姿を見ていると、郁さんが私に「アイツ、もしかして元カレ?」と聞いてくる。

「は、はい……そうです」

「結構、イケメンだったね」

 そう話す郁さんに、私は「そう、ですか?」と聞き返す。

「イケメンだったよ。 智世里さんは、ああいう男がタイプなのかなって思ったよ」 

 そう言われた私は、郁さんの袖を引っ張ると「違います!」と伝えた。

「え?」

 困惑する郁さんに、私は「違います。私が好きなのは……郁さん、あなたです!」と伝える。

「え……本当に?」

「はい、本当です。 私は、あなたのことが好きです。 さっき、それを伝えようと思ったら、元カレが……」

 なんてタイミングなんだろうと思ったんだけど、ここまで来て言わない訳にはいかないの。
 だって、私は郁さんのことが好きだから。郁さんの優しさに触れて、癒やされて、この人と一緒にいたら楽しくなりそうな予感しかなかった。

「嬉しい。 俺すごく嬉しいよ、智世里さん」

「わっ……!?」 

 郁さんは私をすごい勢いで抱きしめてきた。