「はい、これプレゼント」
数分後、会計を済ませた郁さんが私の元へと戻ってきて、カワウソのキーホルダーを渡してくれた。
「本当にいいの……?」
「いいの。 もらってくれるでしょ?」
私は頷いてそのキーホルダーを受け取ると「ありがとう、郁さん。……すごく嬉しい」と伝えた。
「喜んでもらえてよかった」
郁さんは私の頭を撫でてくれる。
「私、今日すごくいい思い出になりました」
それを聞いた郁さんは、「本当に?それは嬉しい言葉だな」と笑っていた。
「本当ですよ。……今日は誘ってくれて、本当にありがとうございました」
「気晴らしになった?」
「なりました、すごく」
仕事のイヤなことも忘れちゃうくらい、楽しかった。郁さんとのデートはとても楽しかったから、思い出になった。
郁さんと一緒に出かけることが出来て、私はよかったと思ってる。
「それはよかった」と微笑む郁さんの横顔を見つめながら、私は郁さんの名前を呼ぶ。
「郁さん、あの……」
「ん?」
「私……郁さんのことがっ」
そう言いかけたその時だった。
「あれ? 智世里?」
誰かに声をかけられた。
声のする方に振り返ると、そこにいたのは……。