「無理に頑張る必要ないから」

……えっ?

その言葉に驚いて、俯いていた顔を上げて葉山くんを見ると真剣な眼差しで私を見つめる彼と目が合った。

「実は、この前の授業の時からずっと考えてたんだよね。どうしたらいいのかって」

えっ、えぇ?

いまいち状況が飲み込めず、ただただ葉山くんが発する言葉を黙って聞く。

「それで、1つアイデアが浮かんだんだけど、今から俺が英単語言って、その後にその単語の意味を言うから合ってたら頷いたり、意味が違ってたら首振ったりとかで答えられる?」

それなら出来そうな気がする。

話せない私にとって、頷きや首振りは唯一できる意思表示。

首を縦に振ると、それを見た葉山くんは言った。

「よし、今からそのやり方でいくから。もし、できそうになかったら無理しなくて大丈夫だから」

と、もしもの為に逃げ道を作ってくれた。