その日の夜。

いつものように、窓を開けて夜空を見上げた。

プラネタリウムで見た星がそこにあって、実際は何倍も綺麗だった。

夜の空を煌々と照らす星。

プラネタリウムの解説で聞いた話を思い出す。

星空の中で、最も明るく輝いている1等星は、こと座のベカ。

七夕でいう織姫だ。

そのベカから右下の方向にあるのは、わし座のアルタイルで彦星にあたる。

ベカから左下の方向にあるのは、はくちょう座のデネブ。

それら3つを結んでできるのは大きな三角形。

“夏の大三角”

7月の晩に東を向いて見上げたところにあって、夏の星空の目印だ。

私は、最も存在感を放っている星を見つめる。

ーー『俺にとって、小春は1番星だよ』

そう言ってくれた楓くん。

今もなお、私の心に響いている。

楓くんは優しすぎるくらい優しくて、欲しかった言葉をくれる。

それに、楓くんは私にたくさんの“初めて”をくれた。

初めてできた友達であり、私に手話を教えてくれた人。

なにより、話せない私を初めて理解してくれた人物でもある。

私にとっての彦星は楓くんだ。

そんな楓くんと今日1日一緒に過ごせて良かった。

プラネタリウムで、楓くんと一緒に綺麗な星空を眺めたこと。

帰り際、勇気を振り絞って楓くんに話せたこと。

とても楽しくて濃厚な1日で、ずっとこれから先も忘れることはないだろう。

1番星に向かって手を伸ばす。

今日は、なんだか手が届きそうだった。