「この世の中はさ、相手のことなんかなにも考えずに言葉にする人がほとんどで、その何気ない言葉によっては、時に凶器にもなるし、そのせいで誰かを傷つけてしまう場合がある。知らないうちに……」
【本当にその通りだよ。言葉の重みを知らない人が多いよね。言った後に後悔しても取り返しつかないもん】
「だな。俺、平気で人を傷付ける人間にはなりたくないな」
楓くんはそうぽつりと呟いた。
【楓くんはならないよ】
「なんで、そんな断言できるんだよ?」
【だって、私がいじめられていた時、助けてくれた】
「それは、目の前で被害に遭ってるのを放って置くことできなかったからで」
【それだけじゃない。話せない私の心の声を知ろうとしてくれた】
私のこと初めて理解してくれた人は楓くんだよ。
さっき、楓くんは私に『優しい心を持ってるんだな』と言ってくれた。
私から見て楓くんにも優しい心があるよ。
私が思っている以上に強くて逞しい心が彼にはある。
【楓くんがいてくれて私は結構救われてる】
その文字を読んだ楓くんは、意外というふうに目を見開いていた。
でも、驚いた表情から一変、彼はくしゃりと笑った。
「小春の役に立ててるのなら嬉しいよ」
そう言った楓くんは嬉しそうな笑顔を浮かべていて、辛い過去から吹っ切れたような気さえ思った。