朝礼が終わると、しばらくして1時間目が始まった。
「それでは、今から隣の子とペアで5分間英単語の出し合いをしましょう!」
うわっ、でた……。
私は、この英語の時間が苦手。
国語や数学などは、ただ黙々と板書したり先生の説明を聞いたりで済むのに、英語だけは違う。
声を発しなければいけない場面がよくあるからだ。
ちなみに、音楽の授業の時は口パクでなんとか誤魔化している。
……今日は、朝からなんだかついてないな。
みんなは、隣の子と一緒に単語の出し合いをしているのに、それをしていないのは私たちだけ。
私は話すことができないから、単語の出し合いなんて到底無理だ。
隣の子に、なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
私の右隣の子は、葉山(はやま)楓(かえで)くん。
少し癖毛のある黒髪に、くっきりとした顔立ち。
休憩時間になる度にわいわいと騒ぎまくっているクラスの男子たちとは違い、雰囲気からしてとてもクールな印象で、葉山くんは1人でも堂々としている。
たまに、友達と一緒にいるところを見るけれど、笑っている様子はあまり見たことがない。
人と話せない私には情報源が乏しく、顔と名前と放課後にはすぐに帰っている様子から部活をしていないことしか知らない。